渋谷駅半径2.5kmの「緑」を、お金の使い道まで決めて追いかける——東京金融賞2025から見えたもの

東京都が運営する「東京金融賞2025」サステナビリティ部門で、東急不動産が「本賞」を受賞。応募136件の中から、投資・事業カテゴリで選ばれた3社のうちの1社になりました。受賞の背景にあったのは、広域渋谷圏の緑化と、それを支えるサステナブルファイナンス。とくに「緑地空間の維持管理費用」まで資金使途に載せた点が、地味に気になります。

賞のニュースは、企業の話で終わるときもあるけれど、制度の“採点軸”が透けることもあります。東京都の「東京金融賞」は2018年から続き、「国際金融都市・東京」構想に向けて、都民のニーズや課題解決に貢献する金融事業者などをたたえる仕組み。部門は「金融イノベーション部門」と「サステナビリティ部門」の2つです。ここで何が評価されたのかを追うと、いま金融が何を支えようとしているのかが、少しだけ読み解けます。

まず事実から。東急不動産は「東京金融賞2025」(主催:東京都)のサステナビリティ部門で「本賞」を受賞しました。今年度のサステナビリティ部門は応募136件。その中から投資・事業カテゴリの受賞企業として3社が選ばれ、東急不動産はその1社に入っています。

東京金融賞の制度趣旨は、「国際金融都市・東京」構想の実現に向け、都民のニーズや課題解決に貢献する金融事業者などを表彰すること。目的としては、国際金融都市としてのプレゼンス向上を通じた金融の活性化と、都民の利便性向上が掲げられています。制度としての背景が見えると、受賞理由の読み方も少し変わってきます。

東急不動産が応募時に掲げたテーマは、「広域渋谷圏におけるネイチャーポジティブへの貢献とウェルビーイングの実現~ESGファイナンスを通じて~」。ここでいう「広域渋谷圏」は、東急グループの渋谷まちづくり戦略で定めた「渋谷駅半径2.5kmのエリア」を指すとされています。渋谷という具体的な都市空間のスケールで、自然資本やウェルビーイングをどう扱うか。まず、この“距離が見える”設定が特徴的です。

評価された点として挙げられているのは、広域渋谷圏でネイチャーポジティブに貢献する取り組みと、その基盤となるサステナブルファイナンス。中でも「積極的な緑化によるエコロジカルネットワーク形成への貢献」が、職場の生産性向上やヒートアイランド現象など、東京都の課題解決にもつながる取り組みとして評価された、と記されています。都市の緑を“景観”だけでなく、働く環境や暑さといった課題に結びつけて言語化しているところに、賞の視線が表れています。

また、東急不動産側の説明では、受賞は重点課題のうち「生物多様性」保全に向けた取り組みが評価されたものとされています。実際に活用したサステナブルファイナンスとして挙げられているのが、2本。

1本目は「Mizuho自然資本インパクトファイナンス」(2025年2月実行)。これは、みずほ銀行とみずほリサーチ&テクノロジーズが、ネイチャーポジティブ経営の浸透に向けた取り組みを推進するファイナンスとして説明されています。KPIは「CO2排出量」「屋上緑化」「森林保全面積」の3つで、東急不動産は年1回、みずほ銀行に取り組みの進捗を報告しているとされています。数字の詳細までは示されていないものの、金融の枠組みの中に「屋上緑化」がKPIとして並ぶ、という置き方が印象に残ります。

2本目は「広域渋谷圏生物多様性グリーンボンド」(2025年7月実行)。こちらは、広域渋谷圏にある東急不動産の5物件で、緑地空間の維持管理費用に、社債で調達した資金の一部を充当しているとされています。こういうの、地味に助かる話だなと思うのが、“整備する”だけでなく“維持管理”まで資金使途として明記している点です。

さらにこのグリーンボンドは、「東京都における生物多様性に関する取り組みを資金使途にしたグリーンボンドとして、事業会社では初の試み」と位置づけられています(条件の詳細は本文中で示されていません)。グリーンボンドの使い道が、都市の生物多様性にまで寄っていく。その変化が、受賞の文章の中ではっきり言葉になっています。

最後に、企業側の方針にも触れておきます。東急不動産ホールディングスは2021年に長期ビジョン「GROUP VISION 2030」を発表し、スローガンは「WE ARE GREEN」。全社方針として「環境経営」と「DX」を掲げ、「中期経営計画2030」では「脱炭素社会」「生物多様性」「循環型社会」の3つを重点課題としています。今回の受賞は、そのうち「生物多様性」に関する取り組みが、サステナブルファイナンスとセットで評価されたかたちです。

「渋谷駅半径2.5km」という具体的なエリアで、緑化の取り組みを進める。その土台に、KPIや年1回の報告、そして「維持管理費用」という資金の使い道まで組み込んでいく。東京金融賞2025のニュースは、都市の緑が“きれいにする対象”から、“管理していく対象”へと置き直されつつあることを、静かに示していました。

出典

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