助産師セラピストに聞く 新しい時代の人との繋がり方
「先生と呼ばれると、全力で逃げます」。そう笑う彼女は、助産師としてのキャリアを土台に、いまは女性たちの人生に寄り添うセラピストとして活動している。上下の関係ではなく、横でいっしょに歩く——その姿勢を彼女は「伴走する」と表現する。先の見えない時代に、人と人はどうつながり直していけるのか。やわらかな語り口の奥に、確かな芯のある言葉が並んだ。
痛みに寄り添ってもらった、8歳の記憶から
原点は、子どもの頃の入院体験にある。8歳のとき、盲腸で入院した彼女は、痛くて辛くてどうにかしてほしいときに、そばにいてくれた医療者の存在に救われたという。その経験が忘れられず、「大人になったら、自分がしてもらったことを人に返せる人になりたい」と思ったことが、看護師、そして助産師を志すきっかけになった。
お母さんのそばで、もっとできることがあるはず——。そんな思いを抱えながら、病院で働き、やがて自分で開業する道を選んでいった。


「お産」から、人生まるごとの伴走へ
助産師として向き合ううちに、女性の悩みはお産の前後だけにとどまらないことに気づいていく。子どもが寝ない時期、反抗期、夫婦の関係——ライフステージが変わるたびに、相談の中身も移ろっていった。彼女はそのニーズに合わせてメニューを少しずつ作り、活動の幅を広げていく。
やがて、妊娠を望む人の悩みの多くが、実は妊活そのものではなく、夫や親、職場の人間関係にあることが見えてきた。「妊活問題じゃなかったみたいになって終わっていく人がすごく増えている」。だからこそ、対人関係や生き方そのものに目を向けるプログラムへと、関心は自然に広がっていった。
ただ優しくするだけでは、人は救えない
彼女が大切にしているのは、相手の話をとことん聞き、まず受け止めること。そのうえで、「今日この場が終わった瞬間から、できること」を具体的に手渡すことだという。自身も、ただ話を聞いてもらうだけ、あるいは優しくされるだけでは前に進めなかった経験があり、「どうしたらいいかを知りたかった」と振り返る。だから、相手が大事にしてきたものを丁寧に聞きながら、次の一歩を一緒に探していく。

家庭が平和であれば、世界平和の最初の一歩
人と過ごす時間が増えた時期は、家族と向き合う機会が増える一方で、ぶつかり合いも生まれやすい。彼女は「いちばん小さな集団である家庭がうまくいっていないと、外でもうまくいかない」と語り、まっすぐに伝え合える関係を育てることこそが「世界平和の最初の一歩」だと考えている。
その土台になるのは、花を見て可愛いと思える、ご飯を美味しいと感じられる——そんな「感じる心」だという。一人ひとりが意識を少し変えていくこと。幸せそうな家庭がひとつ増えれば、それを見て希望を抱く人がまた生まれる。誰かが先に手を取り合うことから、つながりは広がっていくのだと、彼女は穏やかに語ってくれた。





