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フォトグラファー 鬼頭 望さん

中学生のころから、いつもそばにカメラがあった。写ルンですを持ち歩き、友達や家族の何気ない瞬間を撮りためる――そんな少女が、専業主婦として過ごした時間を経て、やがてフォトグラファーへと歩み出した。鬼頭望(きとう のぞみ)さんが本格的に撮影の仕事を始めたのは2016年の夏。やわらかな笑顔の奥に、この数年で重ねてきた心の変化の物語が見えてくる。

「上手じゃないと趣味と言えない」と思っていた

カメラ自体は、ずっと身近にあったという。けれど「上手じゃないと趣味だと言ってはいけない」と思い込んでいて、自分のなかでは趣味にすらカウントしていなかったと鬼頭さんは振り返る。撮るのは風景よりも人。その瞬間、その場を残したくてシャッターを切り、現像して「こんなのが撮れた」と確かめる時間が好きだった。

転機となったのは、娘の存在だ。待ち望んでいた子をべったりと育てた日々から、娘が幼稚園に入って自分の時間ができたとき、ふと先のことを想像した。子どもの世界が広がっていけば、自分のひとりの時間は増えていく。そのとき何をしていたいのか――やりがいになるものが欲しいと、カメラを習い始めた。

インタビュー本編より
インタビュー本編より(画像:WAWON NEWS)
インタビュー本編より
インタビュー本編の一場面(動画より)

自信のなさから、飛び込まざるを得ない場所へ

「もともと、すごく自信がない人だったんです」と鬼頭さんは率直に語る。仕事にしてうまくいくかどうか、不安のほうが大きかった。だからこそ「やらざるを得ない環境に飛び込んだ」。ひとりでブログを書き始めても依頼は来ないだろう、という確信があったからこそ、あえて人のなかへ身を投じたのだという。

続けてこられたのは、何より人に恵まれたから。頬を叩かれるような反発がなかったわけではないけれど、それ以上に助けてくれる人が多かった。「はじめの一歩は怖くて当然だし、はじめの一歩を笑う人は誰もいないんだよ」。そう声をかけてくれた先輩たちの温かさが、何度でも立ち上がれる自分をつくってくれた。

気を使う日々から、自分の気持ちを大切にすることへ

小学生のころ、友達からのカードに「いつも笑顔で笑ってね」と書かれた記憶が、長く心に残っていたという。面白くなくても笑顔でいて、相手が喜ぶことばかりを考える。そうして生きてきた鬼頭さんは、自分が本当は何をしたいのかさえ分からなかったと話す。仕事が忙しくなり、人に気を使う余裕を失ったとき、それでも友人たちは変わらず接してくれた。「そのままでも愛されるんだ」――その実感が、大きな転機になった。

そこから極端にわがままになった時期もあったが、やがて気づく。行動を変えたつもりでも、本質的な部分は変わらない。周りはいまも「気配りができるね、優しいね」と言ってくれる。嫌われたくないという気遣いから、相手を喜ばせたいという積極的な気遣いへ。「本当の意味で、やっと大人になった感じ」と、鬼頭さんはやわらかく笑う。

インタビュー本編より
インタビュー本編の一場面(動画より)

「ありのまま」と「自分の世界」のちょうどいいところで

撮りたいものは、最初から決めていない。「相手がいて、出てくる感じ」なのだという。その人の魅力はどこにあるのかを探りながら、この人とならどんな世界を作れるだろうと考える。写真はありのままを映すものでありながら、ありのままだけではないものも映せる。だからこそ、現実をそのまま残すことも、自分の世界を描くこともできる。

その「ちょうどいい塩梅」を、撮る相手によって探していくのが楽しいと鬼頭さんは語る。自分のメンタルが変わるにつれ、明るく開放的な笑顔だけでなく、考え込む表情や影の部分にも目が向くようになった。撮れる作風もまた、広がってきている。ゆるやかに、けれど確かに変わり続けるその歩みは、これからもきっと続いていく。

インタビュー本編より
インタビュー本編より(画像:WAWON NEWS)