??ちの予定表に、舞台をつくる時間が入る。東温市の市民ミュージカルを読み返す

まちの中に劇場があると、物語は少し現実の予定に近づきます。

観に行く場所があるだけではなく、稽古に通う場所がある。オーディションの日があり、練習の回数があり、本番の日付がある。愛媛県東温市が平成28年度に進めた市民参加型ミュージカルの発表を読むと、舞台作品ができあがる前の「制作の時間」そのものが、地域のカレンダーに入っていく様子が見えてきます。

東温市の市民ミュージカル出演者オーディション告知

題材は、東温市出身の城ノブ

発表資料によると、東温市は「市の新たな魅力を創出する」ことを目的に、偉人を題材にした市民参加型ミュージカルを制作します。今回の題材は、愛媛県東温市出身の社会事業家・城ノブです。立場の弱い女性や子どもたちのために活動し、多くの命を助けた人物として紹介されています。

舞台づくりの拠点となるのは、坊っちゃん劇場です。所在地は愛媛県東温市見奈良1125。運営主体は株式会社ジョイ・アートで、代表取締役社長は越智陽一氏とされています。東温市は、市内に劇場を構えて10年をこえる常設型劇場である坊っちゃん劇場を、市の芸術発信拠点と位置づけていると説明されています。

題材となる人物がいて、稽古と本番の場所がある。地域の物語を舞台にするには、その両方が必要です。坊っちゃん劇場があることで、「いつかやりたい」ではなく、実際の制作スケジュールへ進めやすくなっているように見えます。

東温市のロゴ

定員40名に、86名が応募した

キャスト募集の定員は40名でしたが、応募者は86名。定員40名に対して80名を超える応募があったとされています。市民参加型の企画では、この数字がとても大事です。観客になる前に、まず「出たい」「関わりたい」という人が集まっている。

オーディションは平成28年11月19日(土)13時から、東温市農林業者トレーニングセンターで実施される予定でした。会場所在地は東温市田窪235番地。また、オーディション当日を含め、公演まで随時取材・撮影が可能とされています。完成した舞台だけでなく、そこへ向かう途中も開かれている点が、この企画らしいところです。

本番に向けては、平成28年度中に練習を28回実施する予定とされていました。本公演は平成29年4月29日(土)と30日(日)の2回公演で、会場は坊っちゃん劇場です。練習28回という数字が入ると、舞台は急に生活に近づきます。週末や平日の予定を調整しながら、少しずつ作品ができていく。その時間が、市民ミュージカルの本体でもあるのだと思います。

地域の舞台制作をイメージしたビジュアル

県内で増えていく、市民参加型の点

この取り組みは、愛媛県下では西条市、八幡浜市についで3番目の事例になるとされています。ひとつの自治体の新企画として読むこともできますが、県内で地域の物語を舞台にする動きが少しずつ増えている、と見ることもできます。

東温市の所在地は〒791-0292 愛媛県東温市見奈良530番地1。市長は加藤章氏。東温市の設立は平成16年9月21日、人口は33,637人(平成28年10月1日現在)とされています。連絡先はTel:089-964-4401、Fax:089-964-1609。公式サイトと、市民ミュージカル出演者募集に関するページも案内されています。

地域の舞台は、上演日の2日間だけで終わるものではありません。題材を知る人が増え、稽古に通う人がいて、家族や友人がそれを見守る。まちの中に、作品ができていく時間が生まれる。東温市の市民ミュージカルは、城ノブという人物を題材に、坊っちゃん劇場を拠点として、その時間を始めようとしていた企画でした。