17歳のいまを、2030年から見返す。FODで配信される中田璃士ドキュメンタリ

競技の映像は、結果を確かめるためだけに残るものではないのだと思います。

何年かあとに見返したとき、「この人はこの時点で、もうここまで来ていたのか」と気づくことがある。まだ完成形ではない。けれど、目線や沈黙や、演技後の息の整え方のなかに、次の時間へ向かう小さな輪郭がある。FODで配信される中田璃士選手のドキュメンタリー『僕は今、憧れの存在になれていますか?-Rio NAKATA: Greatest Moment in 2030-』は、たぶんそういう種類の映像なのだと思います。

中田璃士選手のドキュメンタリー告知ビジュアル

17歳の「今」を、急いで結論にしない

フジテレビの発表によると、このドキュメンタリーはFODプレミアムで3月23日正午から配信される作品です。ノービス時代から、最後の世界ジュニアまで。フジテレビが撮影してきた映像をたどりながら、中田選手の素顔と成長の軌跡に近づいていく内容だとされています。

中田選手は3歳でスケートを始め、父の指導のもとで競技に向き合ってきた選手です。武器は4回転ジャンプ。世界ジュニア選手権では連覇を果たし、目標にはオリンピック金メダルを掲げています。発表資料では、年齢制限によってミラノ・コルティナ五輪への出場資格がなかったこと、そして男子フィギュアの会場を訪れ、4年後へ向けた思いを新たにしたことにも触れられています。

ここで面白いのは、作品の視点が「すでに何かを成し遂げた人の記録」だけではなさそうなところです。もちろん実績はある。けれどタイトルにあるのは、「僕は今、憧れの存在になれていますか?」という問いです。答えを言い切るのではなく、問いのまま置いてある。

憧れは、近づくほど形が変わる

中田選手が憧れの存在として名前を挙げているのは、宇野昌磨さんです。憧れの選手がいる、という話はスポーツ記事ではよく見かけます。でも本当は、そこには少し複雑な時間が流れている気がします。

最初はただ遠くに見える。真似したい、追いつきたいと思う。けれど競技を続けて、自分自身も見られる側になっていくと、憧れは単なる目標ではなくなっていく。自分は誰かにとって、そういう存在になれているのか。あの背中を見ていた自分は、いまどこに立っているのか。タイトルの問いには、そういう少し照れくさくて、でも切実な感触があります。

氷上で演技する中田璃士選手のイメージ

17歳という年齢も、この作品を少し特別にしていると思います。若さを「これからが楽しみ」という便利な言葉でまとめることはできます。ただ、本人にとっての今は、未来の予告編ではありません。毎日の練習も、試合の緊張も、うまくいかなかった日の悔しさも、全部その瞬間の本番です。

だから、このドキュメンタリーは2030年へ向かう物語でありながら、同時に「いま」を雑に通り過ぎないための記録でもあるのだと思います。未来の金メダル候補として見るだけではなく、ひとりの選手が、自分の憧れと自分の現在のあいだでどんな表情をしているのか。そこを見られることに、映像作品としての意味がありそうです。

見返せる場所がある、ということ

FODはフジテレビ公式の動画・電子書籍サービスで、FODプレミアムのスタンダードコースでは月額1,320円(税込)で動画や雑誌、電子書籍などを利用できます。配信時間は予告なく変更される場合があるため、視聴前にはFODの番組ページを確認しておくのがよさそうです。

スポーツの時間は、とても速いです。ニュースになった瞬間にはもう次の大会が近づいていて、成長も失敗も、すぐに次の話題へ押し流されてしまう。だからこそ、こうしたドキュメンタリーとして残ることには価値があります。

中田璃士選手が2030年にどこに立っているのかは、まだ誰にもわかりません。でも、あとから振り返ったときに「あの頃の17歳は、こんな表情で次の時間を見ていた」と確かめられる映像がある。それだけで、観る側の記憶も少し丁寧になる気がします。