鳩の形をした春を買う。エトロとアイモ・エ・ナディアのコロンバ

春を知らせるものは、桜だけではないのだなと思います。

カレンダーの数字より先に、食べものの形で季節がやってくることがあります。丸い缶、薄い包装紙、焼き菓子の香り。そういう小さな合図のほうが、案外、体には早く届く。エトロがミシュラン星付きレストラン「イル・ルオゴ・アイモ・エ・ナディア」と組んで用意するイースター菓子「コロンバ パスクァーレ」も、そのひとつに見えます。

エトロとイル・ルオゴ・アイモ・エ・ナディアによるコロンバ パスクァーレ

鳩の形をした、春の挨拶

コロンバ パスクァーレは、イタリアのイースターに親しまれている伝統菓子です。「コロンバ」はイタリア語で鳩。つまり、春のお祝いを鳩の形に焼き上げるお菓子ということになります。説明だけ読むと少し遠い文化のようにも感じますが、形を見た瞬間に、急に生活の中へ入ってくる感じがある。これが年中行事のおもしろいところです。

今回のコロンバは、3月20日(金・祝)からエトロ銀座本店と公式サイトで数量限定販売されるもの。価格は21,060円(税込)、サイズは34.5×25.6×14cm、内容量は1000gと発表されています。小さなおやつというより、テーブルに置いて、少しずつ切り分けながら時間を共有するための菓子です。

1kgの焼き菓子、と書くと急に現実味があります。手土産という言葉より、もう少しゆっくりした場面が似合う。誰かの家に集まったり、週末の午後に切り分けたり、残った分を翌朝のコーヒーと一緒に食べたり。高級なものなのに、最後はそういう生活の風景へ戻っていくところがいいなと思います。

パッケージとともに置かれたコロンバ パスクァーレ

時間をかけた菓子は、急がせない

発表資料によると、生地には天然酵母を使い、発酵には約45時間。砂糖は控えめにし、アカシア蜂蜜を加え、新鮮なバターと卵、カラブリア産オレンジピール、プーリア産の有機アーモンドを合わせているそうです。

こうした素材の名前は、並べるだけだとスペックのようにも見えます。でも、45時間という数字が入ると、少し見え方が変わります。すぐに完成させないこと。膨らむまで待つこと。焼き上がりを急がないこと。春の菓子にそういう時間が折り込まれているのは、なんだか自然です。

エトロとアイモ・エ・ナディア・ミラノの協業は、2023年から続いているものだとされています。シェフのアレッサンドロ・ネグリーニ、ファビオ・ピサーニとのコラボレーションとして、これまでパネットーネやパンドーロを制作し、今回はコロンバへ。冬の菓子から春の菓子へ、同じ関係性のまま季節が移っていく。その連続感も、この企画の魅力です。

エトロの世界観をまとったコロンバ パスクァーレのパッケージ

ブランドの話で終わらないところ

エトロのようなブランドが手がける季節菓子は、ともすると「特別なもの」として距離ができやすい。けれど、コロンバという菓子そのものは、祝祭と食卓のあいだにあるものです。見た目は華やかで、価格も決して日常的ではない。それでも、食べるときには必ず切り分ける。誰かの皿に乗せる。残りをしまう。そうやって、生活の手つきに戻っていきます。

春の合図を買う、という言い方は少し大げさかもしれません。でも、毎年同じ季節にだけ出会えるものには、そのくらいの力があります。花を見るように、菓子を見る。鳩の形をした焼き菓子がテーブルにあるだけで、部屋の中に小さく春が入ってくる。

数量限定なので、予定数に達し次第終了とのこと。買えるかどうかも含めて、季節ものらしい短さがあります。だからこそ、見かけた人の記憶には残るのかもしれません。来年また似た形を見たときに、「ああ、春が来た」と思い出すための、少し贅沢な目印として。