味つけを足さないから、素材が見える。扇町公園の「塩だけ」味覚まつりを読み返す

食のイベントでは、にぎやかな味つけや映える盛りつけに目が行きがちです。でも、2026年3月に大阪・扇町公園で開かれた「全国 春の旬 味覚まつり」は、かなり思い切ったルールを掲げていました。調味料は、塩のみ。

開催日は2026年3月7日(土)・8日(日)、時間は11時から16時まで。全国各地から旬の素材が集まり、来場者は作り手と話しながら、気に入った一皿に投票する参加型の企画も用意されていました。COMMONが構想する「日本の素材甲子園」の先行実証の場として位置づけられています。

ソースでまとめない、という選び方

調味料を塩だけにするのは、簡単そうでいて、実はかなり厳しいルールです。強いソースでまとめられないぶん、素材の甘み、香り、脂の質、火入れの加減がそのまま前に出ます。食べる側も、説明より先に舌で確かめることになります。

紹介されていた食材には、最高級のウニ、和牛、牡蠣などがあります。池田漁業協同組合(香川県・小豆島)は牡蠣で参加し、なにわ黒牛(大阪府・阪南市)は和牛で名前が挙がっていました。ツムラ本店「河内鴨」と森川農園「難波葱」(大阪府・松原市)の組み合わせも紹介されています。

土地の名前が、そのまま味の輪郭になる。こういう場では、食材名だけでなく、どこで作られ、誰が届けているのかまで一緒に立ち上がります。流通の中で見えにくくなりがちな作り手の存在を、食べる時間の中へ戻す試みだったのだと思います。

全国の素材と、地元の食材が同じ会場にある

会場には「大阪産(もん)」ブースもあり、地元の採れたて野菜や名産品が生産者自身の手で届けられたとされています。全国の食材を味わう場でありながら、地元の食材を見直す場所にもなっていたのが印象的です。

地域の新しい名物づくりとしては「泉南チャーハン」も紹介されていました。泉南市観光協会とCOMMONが連携して進めるシティプロモーションで、「タコ」と「泉南産の玉ねぎ」を使うことがルールです。なんとなく名物らしくするのではなく、素材の条件を先に置くところが、このイベントの考え方とよく響き合っています。

来場者が一番と思った一皿に投票する「うまいもんNo.1決定戦」も行われました。参照した情報からは結果までは確認できませんが、食べ比べた感想をその場で行動へ変えられる仕組みとして、イベントの体験を少し濃くしていたはずです。

お子さま向けのキッズパークや、食後のデザート店の出店もありました。素材に集中したい人、散歩の途中で寄る人、家族で過ごす人。それぞれの速度が同じ公園にあったのだと思います。入場料、チケットや予約の要否などは、参照情報からは確認できませんでした。

このイベントはすでに終了しています。それでも、「塩だけ」というルールは記憶に残ります。足さないことで、かえって見えるものがある。素材の輪郭も、作り手の名前も、自分の好みも、少しだけくっきりする。扇町公園の味覚まつりは、そんな静かな発見を促す場だったのだと思います。