生成AIは「作った」あとが難しい。品質とコストを同じ目線で見にいく、アイレットの“観測”の話

回答が揺れる(ハルシネーション等)/請求が読みにくい。運用フェーズで出てくる2つの不安を、ログと指標でほどいていく――アイレットが用意した「LLM Observability 導入支援サービス」を手がかりに、いまの生成AI運用の空気をまとめる。

東京・港区のアイレットが、「LLM Observability 導入支援サービス」を使えるようにした。狙いは、生成AI活用で起きやすい「回答精度の不安定さ(ハルシネーション等)」と「不透明なコスト」を、リアルタイムで監視・分析できる環境を整えること。PoCの次に来る“運用の現実”を、きちんと説明できる形に戻していく話でもある。

生成AIの導入は、作って試すところまでは走りやすい。けれど業務に組み込んで回り始めると、「毎日ちゃんと動いているか」を問われる。アイレットも、運用フェーズでは回答精度の不安定さや不透明なコスト構造が、本格導入を阻む壁になりやすいという認識を示している。

この“壁”は、だいたい2つに分かれる。ひとつは品質。ハルシネーションのような想定外の回答が混じると、現場は一気に慎重になる。もうひとつはコスト。使い方が変わるだけで請求が揺れやすく、説明の筋道を作りにくい。こういうの、地味に疲れる。

厄介なのは、従来の監視だけだと手が届きにくいところが残ることだ。CPUやレイテンシ、エラー率は追える。でも、生成AIの出力が妥当だったか、どのプロンプトがどれくらいトークンを消費したか――このあたりは「見えていないもの」として残りやすい。ここで言われる「ブラックボックス化」は、技術というより運用の手触りとして現れてくる。

アイレットが文脈として置くのが「LLM Observability(LLM可観測性)」。AI特有の内部動作をリアルタイムで可視化し、状態を正確に把握するための仕組み、と説明している。ポイントは、品質とコストを“同じテーブルに並べる”ところにある。

同社は分析対象の例として、「回答の妥当性」や「プロンプトごとのトークン消費量」を挙げる。妥当性は品質の話で、トークンはコストの源泉になりやすい。別々に悩むと迷子になりがちな2つが、同じ画面で追えるようになるのは、運用の迷子防止みたいな効き方をする。

今回の導入支援でやることとしては、LLMを利用したAIアプリケーションのパフォーマンスや、コスト増加の要因をリアルタイムで監視・特定できる環境を整える、とされている。支援内容には、コンサルティング、LLMアプリ観測基盤の構築、データ分析・改善活動の技術支援が並ぶ。

監視項目として挙げられているのは、インプット/アウトプット、トークン数/コスト、レイテンシ、エラー率。従来の運用で見慣れた指標と、LLMならではの指標が同じ列に並ぶ。

もうひとつ、この話に現実味が出るのは、アイレットが自社運用の経験を前に置いている点だ。自社サービス「cloudpack」のサポートデスク業務で、生成AIを活用した回答精度評価の自動化・可視化基盤を独自に構築し、運用してきたという。そこでRAG評価フレームワーク「Ragas」と、Datadogの「LLM Observability」を連携した、と記載がある。

効果として示されている数字も具体的で、手作業だった評価プロセスを自動化し、月間約2.6人日、年間で31.2人日の工数削減を実現したとしている。派手な話というより、「回し続ける」ための小さな勝ち方の提示に近い。

一方で、公開情報の中では、提供開始日や申し込み方法、具体的な料金体系(初期費用や月額など)までは細かく切り出されていない。料金は、要望と規模をヒアリングしたうえで算出するとされる。だからこそ、導入を考える側は先に「何を観測して、どう語れるようになりたいか」を言葉にしておくのが近道になりそうだ。

生成AIの「中身が見えない」は、気合いで受け止める不安ではなくなってきた。品質の揺れとコストの揺れを、同じ場所で見て、同じ言葉で話せるようにする。アイレットの今回の動きは、生成AIが“運用の話”として腰を据え始めたサインにも見える。

出典

  • 原題:アイレット、LLM の「ブラックボックス化」を解消し、品質とコストを可視化する「LLM Observability 導入支援サービス」を提供開始 | アイレット株式会社のプレスリリース
  • URL:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000445.000009999.html

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