この記事のポイント
- 年春季経済交渉についてでは、単発ニュースではなく全体の流れを見ることが大切です。
- 30代〜40代女性に関係するのは、使いやすさ・続けやすさ・選びやすさの変化です。
- 共通点と違いを分けて読むと、自分に合う動きが見えやすくなります。
組合員のベースアップは月額18,000円(5.17%)、定期昇給を含めた賃上げ総額は月額25,700円(7.39%)。注目したいのは上げ幅そのものより、2022年度からの“連続”と、人事施策の並べ方で見えてくる設計図だ。
大陽日酸が、2026年の春季経済交渉に関する賃金改定の内容を示した。組合員1人平均で、ベースアップは月額18,000円(5.17%)。制度昇給を含む賃上げ総額は月額25,700円(7.39%)という整理だ。こういう話はつい「今年は何%」に目がいくけれど、今回の文面は“続け方”の説明が厚めで、地味に読みごたえがある。

賃上げの話題は、家計の感覚に近いぶん、数字の大きさが主役になりやすい。けれど、同じ数字でも「どこまで含めているか」で見え方は変わる。
まず示されているのは2種類の数字だ。ベースアップは月額18,000円(5.17%)。これは賃金の土台を持ち上げる、という意味合いの数字として置かれている。一方、制度昇給を含む賃上げ総額は月額25,700円(7.39%)。定期昇給ぶんまで含めた“増え方”をまとめた数字になる。ここを分けて書くのって、読み手にとっては迷子防止みたいなものだと思う。どの数字を見ているのか、途中でわからなくなりにくい。
そして今回、単年の上げ幅と同じくらい目に入ってくるのが「積み上げ」の言い方だ。文面では、2022年度から5年連続でベースアップを行ったとしている。さらに、5か年累計で月額60,500円の賃金改善になったとも記されている。制度昇給を含めた総賃上げ率は、2021年度比で約21%の増額という書き方もあった。単発の回答というより、“ここまでの連続”を一緒に提示してくる構成だ。
この「続け方」を支える理由として、事業環境の変化が挙げられている。DXの進展、少子高齢化による労働力人口の減少、価値観の多様化。仕事の中身も、人の集まり方も変わる前提があるからこそ、賃金の話も単年の出来事として切り分けにくい——そんな空気が文章の土台にある。
もう一つの軸は「人への投資」という言葉だ。大陽日酸は「人財こそ最大の資本」との認識のもと、人的資本経営のさらなる高度化が不可欠だとしている。賃金改定を単独の話にせず、人事の取り組み全体の中に置き直しているのが特徴だった。
その全体像として、人事領域の重点課題を5つの柱で進めるとしている。
(1)社員の潜在性・可能性を引き出す「キャリア共創」
(2)人財を最適に配置する「適材適所」
(3)心身ともに健康で働きがいを高める「ウェルビーイング」
(4)多様な人財が活躍できる環境整備としての「DE&I(Diversity, Equity & Inclusion)」
(5)未来を支える人財の確保・育成としての「採用・育成」
賃上げが、このどれか一つの“ご褒美”として語られるというより、5本を回すための土台として置かれている印象がある。
あわせて、組合員の賃金改定に合わせて管理職社員についてもベースアップを行う、という一文もある。対象として、ライン管理職(課長・部長クラス)を挙げ、役割と責任の大きさを踏まえて処遇の充実を図るとしている。現場と管理職の間に立つ層まで視野に入れる、という合図としては読み取れる一方、管理職のベースアップ額や率などの具体的な数字は、提示された範囲では見当たらない。
さらに文面では、2026年4月に始まる新中期経営計画の達成に向けた文脈にもつながっていた。春闘の数字が、次の数年の運用の話と同じ段落に置かれると、読み手も「どこに力点を置く会社なのか」を追いやすくなる。こういう並べ方、地味に助かる。
一方で、読み手が気になる情報には空白もある。資料の中では、掲載日(いつの時点の内容か)、交渉・合意の相手、賃金改定がいつから反映されるのか、対象範囲(どの会社・事業所・雇用形態まで含むのか)などは明記されていない。管理職の上げ幅の具体数字も見当たらなかった。
それでも、単年の%だけで終わらせず、「5年連続」「累計60,500円」「2021年度比で約21%」と積み上げで語り、人事の5本柱や管理職への言及まで一続きで置く。賃上げが“その年の出来事”から、少しずつ“設計図の一部”として読めるようになってきた——その変化自体が、静かにおもしろい。
出典
- 原題:2026年春季経済交渉について | 大陽日酸株式会社のプレスリリース
- URL:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000015.000118246.html





