忙しい日ほど、ノートが埋まるだけで安心してしまう。そんな“わかった気”の正体を、気合いじゃなく言葉でほどく本が3月に出る。
家のことを回して、仕事も終えて、やっと座れたと思ったらもう眠い。なのに「勉強しなきゃ」は消えない。できなかった日だけ、やけに鮮明に残るんですよね。そんな感情を“性格のせい”にしないで、生活の設計として扱い直してみよう、というのが『逆転合格を可能にする 資格試験の科学的勉強法』(鈴木 豪/ロギガ書房・3月18日発売)です。

この本のいちばん好きなポイントは、「流暢性の幻想」という名前を最初に置いてくれるところ。
読んでいるとスルスル進む。線も引いた。付せんも貼った。やった感はある。——でも、いざ問題を解こうとすると出てこない。あの、胸のあたりがスッと冷える感じ。あれを「自分の根性が足りない」で片づけずに、「そういう錯覚、起きやすいよね」と呼び直す。こういうの、地味に助かります。

著者の鈴木豪さんは、案内文によると1974年生まれ。幼少期は4歳まで言葉が話せなかったとされ、高校時代は学年624人中500番台の成績だったという人です。大学受験の失敗をきっかけに、脳科学や心理学を手がかりに、勉強のやり方を独学で組み替えていった。
その後、翌年に京都大学へ合格。のちに京大を中退してカナダへ留学し、3年で大学を飛び級卒業。数学統計学部・理系全学部・文理全学部でトップとなる「首席三冠」を達成し、カナダ総督からメダルを授与された、という経歴が続きます。英検1級、TOEIC満点とも。振れ幅が大きいぶん、武勇伝として読むこともできる。でも本の入口にあるのは、「才能」より「設計」に寄せた話です。

で、肝心の「流暢性の幻想」を踏んだあと、どうするか。
本書では、思い出す学習(練習テスト)や、分散学習、教えるつもりで学ぶ方法、習慣の組み立て方などが紹介されるそうです。共通しているのは、机に向かって“わかった気になる時間”を増やすというより、「出せるか」「戻れるか」を基準にするところ。
まとまった勉強時間が取れない人ほど、読み返しで安心を買うより、短くても“取り出す練習”を混ぜたほうが、日々に馴染む。そんな方向へ、勉強をちょっとだけ現実側に引っ張ってくれる感じがあります。
鈴木さんはTAC実用講座の講師でもあるとされ、2025年にTAC新宿校で行われた「勉強×睡眠セミナー」は、単発で約1,600名の申込みがあったとのこと。睡眠を削ってがんばる話より、「回復込みで回す」ほうに人が寄っている空気も、なんとなく伝わってきます。
派手な成功談より、今日の自分の“わかった気”を一回疑ってみる。その小さな問いから始まるのが、この本のいちばんの持ち味だと思いました。
『逆転合格を可能にする 資格試験の科学的勉強法』(鈴木 豪/ロギガ書房)は2026年3月18日発売、2,400円+税。「線を引いた=理解した」になりがちな日ほど、いったん立ち止まれる言葉がある。勉強は意志の強さというより、錯覚の扱い方でラクになることもある——読み終わったあと、そんな静かな余韻が残ります。
出典
- 原題:【TAC実用講座】京都大学合格・カナダの大学で首席三冠を獲得した著者が解説『逆転合格を可能にする 資格試験の科学的勉強法』3月18日発売 | TAC株式会社のプレスリリース
- URL:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002135.000021078.html





