書店の入口が、ちいさな展覧会になる——『変な地図』飾り付けコンクール、受賞16店をたどる

2025年10月末に出た雨穴『変な地図』は、2026年2月時点で70万部を突破。全国の書店が“入口の数メートル”を作品みたいに仕立てた飾り付けコンクールから、雨穴が選んだ金・銀・銅16店を記録する。

仕事帰り、駅ビルの書店にふらっと吸い込まれて、入口だけ見て帰る日がある。目的の棚まで行かなくても、あの数メートルで「いま、店が何に熱を上げてるか」が伝わってくるから。

2025年10月末に発売された雨穴『変な地図』は、2026年2月時点で70万部を突破。数字だけならニュースはそこで終わるのに、この本はなぜか、書店の入口の空気まで連れていった。

好きポイントをひとつ挙げるなら、「入口が、ちいさな展覧会になる」ところだと思う。棚の整理や平台づくりって、毎日ちょっとずつ手が入る日常の作業でしょう。それがこの本の時期だけ、入口の景色ごと“展示”みたいに更新されていく。こういうの、地味に助かる。まだ読んでなくても、入口の一枚絵で気配だけ先に受け取れるから。

その背景にあったのが、発売をきっかけに全国の書店で行われた店頭飾り付けコンクール。応募は約250店。そこから金賞1店、銀賞5店、銅賞10店の計16店が選ばれている。

選ぶのが著者本人、というのも静かに特別だった。雨穴が実際に店頭を見て、金・銀・銅を決めたという。つくる側にしかわからない緊張感——文化祭の前夜みたいな、あの感じ——が、入口の数メートルにだけ宿る。

金賞は「紀伊國屋書店 西武東戸塚S.C.店」。ショッピングセンターの中、つまり“用事のついでに立ち寄る場所”のど真ん中に、いちばん凝った入口が置かれたのが面白い。名所というより、生活圏の途中でふいに出会うから、記憶に残りやすい。

銀賞は5店。
・喜久屋書店 仙台店
・ジュンク堂書店 旭川店
・ヴィレッジヴァンガード イオンモール福岡伊都店
・八重洲ブックセンター イトーヨーカドー上永谷店
・平安堂 あづみ野店

店名と街の名前が並ぶだけで、北から南まで、空の色が少しずつ違って見える。飾り付けは、その土地のリズムが出やすい。同じ題材でも「似せない」が強みになる、というのがよくわかる。

銅賞は10店。
・ブックスアメリカン 北上店
・岩瀬書店 会津若松駅前店
・TSUTAYA BOOKSTORE 岡山駅前店
・未来屋書店 四條畷店
・谷島屋書店 ららぽーと磐田店
・喜久屋書店 大和郡山店
・平和書店 アル・プラザ京田辺店
・本の王国 松阪川井町店
・未来屋書店 碑文谷店
・TSUTAYA 中万々店

駅前、モールの中、住宅地の近く。入口の条件は店ごとにぜんぜん違うのに、ひとつの本が同じテーブルに載る感じがある。書店が「売り場」以上の場所に見えてくる瞬間だ。

なお、銀賞・銅賞店の写真や雨穴のコメント、直筆サイン色紙が載ったページもある( https://colorful.futabanet.jp/articles/-/6042 )。店名だけでは想像しにくい“手触り”が、写真で急に立ち上がる。紙の上の物語が、紙とテープと手作業で、街の入口へ戻っていく——その往復が見えてくる。

雨穴の顔が入口に並ぶ時期の書店は、少しだけお祭りみたいに見える。レジの音も棚の匂いもいつも通りなのに、入口だけが別の時間を持っている。

用事の帰り道にふと思い出すのは、本の筋そのものより、誰かが何度も手を動かした痕跡だったりする。書店の入口が展覧会になるのって、たぶん、そういう記憶の残り方をしてくれるからだ。

出典

  • 原題:70万部突破の超ヒット作『変な地図』の書店飾り付けコンクールを全国書店で開催! 雨穴だらけの店頭が並ぶ中、受賞した店舗は? | 株式会社双葉社のプレスリリース
  • URL:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000945.000014531.html