一着で、体温も気分も“途中で直せる”。Sportmax FW26「Dynamism」を見て思ったこと

朝と昼、屋内と屋外。秋冬の一日って、意外とコンディションが揺れる。ミラノで披露されたSportmax 2026年秋冬は、その揺れに服のほうが寄り添ってくる感じがあった。

朝はまだ肌寒いのに、昼には上着が邪魔になる。移動のあいだに入った店がやけに暑くて、外へ出たら風が強い。こういう“日中の気まぐれ”って、地味に消耗しますよね。Sportmaxがミラノで見せた2026年秋冬「Dynamism」は、その消耗に、服の設計で答えようとしているように見えた。

「ダイナミズム」と聞くと、勢いのある直線とか、スピードのイメージが先に立つ。でも今季の空気は、もっと生活の側に寄っていた。キーワードとして挙がるのは、シェイプを自在に変えられること、コンバーチブルな仕様、グラフィカルな表現。動くために派手にするというより、“状況が切り替わり続ける日”に、服も一緒に切り替わってくれる感じ。

私がいちばん惹かれた好きポイントは、ここです——「その場で直せる余白」が、ちゃんと贅沢として扱われていること。ロングからショートへ大胆に転換する、という説明ひとつ取っても、便利以上のリアリティがある。昼は分量があるほうが安心で、夜は少し身軽になりたい。予定が重なる日ほど、あの“ちょっとだけ変えたい”が積もるから。

今季はネックラインにも焦点が当たっていて、取り外しできるコントラストカラーが登場する。同じ服のまま、首まわりの「きちんと」と「抜け」を行ったり来たりできる仕掛けだと思う。ラップやシンチのディテール、デコンストラクテッドなテーラリングも、端正さを固定するというより、動ける端正さへ寄せていく。

土台はブランドのシグネチャーでもあるドゥーブレ素材。それなのに、重要な要素として“軽やかさ”が挙げられているのが面白い。秋冬は重ねるぶん、気持ちまで重く見えがちで、そこを「軽いですよ」と言い切らない。構造や切り替えの工夫で、あとから体感させてくるところに、このコレクションの呼吸がある。

素材のコントラストも、静かに効いている。スエードとレザー、マットとシャイン、シアーとオペーク。光の当たり方で表情が変わって、同じ人の中の違う面が、時間帯ごとにふっと現れるみたいだった。ボディラインに沿うニットやジャージーも出てきて、温度と動きやすさと見え方が、一本の線でつながっていく。

秋冬なのに大胆に肌を見せる、という言及もあったけれど、露出を強く主張するというより、重ね着の季節に“抜け道”をつくる感覚に近い。きらめき、スラッシュ、コントラストトリム、鮮やかなカラーフラッシュ。沈みがちな景色に、必要な分だけ空気を通す。

キーアイテムとして挙げられていたのは、オーバーサイズのオリガミカラーが印象的なジレ。レイヤードやミックス&マッチ前提の設計だという。ジレって、主役にも脇役にもなれる「間のアイテム」だからこそ、今季の“切り替え”の思想を象徴している気がした。小物も、クロコダイルエフェクトのイヤリングや、ジョン・バルデッサリのドット表現を想起させるクラッチなど、グラフィカルな軸を、手元でそっと補強していた。

切り替えが多い日は、正しさよりも、微調整できる余白のほうが頼りになる。Sportmaxの「Dynamism」は、勢いの記号じゃなくて、その余白が続いていく音みたいだった。こういうの、ちゃんと助かる。

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