滋賀の公立高校から始まった「びわこんどーむ」の授業は、全国81校・延べ1万人超に広がってきた。コンドームの実物に触れる授業の記録と、2,551人分の自由記述を束ねた書籍『びわこん・レポート ―中高生が〈触れて〉学んだ関係性の授業』が、2026年春に刊行予定(発売は5月頃予定)。
家の中で、話題だけが先に大きくなることがある。性の話も、そのひとつ。必要だとは思うのに、言い出す順番が見つからないまま、テーブルの端に置かれがちだ。
そんな空気に対して、ちょっと別の入口を用意してきた授業がある。コンドームを「知識」ではなく「手触り」として確かめる——全国で続いてきたその実践が、一冊の本になる。

好きポイントをひとつ挙げるなら、このプロジェクトの強さは「机の上に置ける単位」に落としているところだと思う。
教材「びわこんどーむ」は、自主練習用コンドーム2個と解説書のセット。1万個以上がつくられ、全国の学校に届けられてきたという。性教育って、ときどき言葉が抽象に寄りすぎて、会話が空中戦になりがちでしょう。でも「2個」と「解説書」くらいの具体性があると、話がすっと地面に降りてくる。こういうの、地味に助かる。
授業自体も、過剰にドラマチックには描かれない。生徒がペアになってコンドームを手指に装着し、素材や耐久性を確かめながら、互いの反応を観察する。要は“正解を覚える”というより、“確かめ方を身につける”。「知っているはず」と「触れて確かめた」の間にある段差を、そのまま授業にしている感じがある。

数字は静かに効いてくる。高校3年生では76%が「実物に触れたのが初めて」と答えたという。たしかに、多くの人が「いつかは」と思いながら、実物に手が届く場面は意外とやってこない。その“空白の長さ”を、本人のせいにしない言い方が必要なんだと思わされる。
一方で、中学1年生の59%が「小学校低学年から中学1年生」で学ぶのが適当だと回答したという結果もある。「早い・遅い」を決めるのは大人、という思い込みに、子どもの実感がすっと差し込んでくる。安心のタイミングと、知りたいタイミングは、必ずしも重ならない。

今回まとまる書籍『びわこん・レポート ―中高生が〈触れて〉学んだ関係性の授業』には、授業の記録に加えて、中高生2,551名のアンケート自由記述がほぼ網羅的に載るという。授業を引き受けた教員や養護教諭、外部講師の寄稿も収録される。声が一方向に整えられず、教室の内側と外側が同じ紙面に並ぶ——その並べ方自体が、誠実だ。
プロジェクトは滋賀県の公立高校で始まり、これまで全国81校で実施、延べ1万人以上が参加してきた。代表の清水美春さんは元・滋賀県立高校の保健体育教員(教員歴19年)で、JICA海外協力隊としてケニアでエイズ対策に関わった経験もある。いまは大学職員として働きながら続けているという。教室と社会の距離を、無理なく縮めてきた人の足取りが見える。

刊行は2026年春、発売は2026年5月頃の予定。発行は、ゆまに書房(大修館書店グループ)。
授業の記録が本になる、というより、「言いにくさ」と「確かめた感触」まで一緒に、棚に置ける形にする出来事に見える。言葉だけでは追いつかない話題ほど、まず“触れられるサイズ”にしておく。そんな工夫が、ページの間にちゃんと残るといいなと思う。
出典
- 原題:「まだ早い」は本当か?全国1万人の中高生がコンドームに〈触れて〉学んだ実践が、ついに書籍化『びわこん・レポート』今春刊行へ | びわこんどーむプロジェクトのプレスリリース
- URL:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000127159.html





