保護犬活動を続けるということ~NPO法人 はぴねすDOG~

あなたは「保護犬」を知っていますか?
芸能界でも杉本彩さんや田中美奈子さんが動物愛護に関する保護団体を設立されていたり、テレビ番組で坂上忍さんが保護施設を建設して活動されたりしていますね。
そういったこともあり、少しずつ保護犬活動が周知され、ご存知の方も多くなっているのではないでしょうか。

 

私自身、“保護活動”の発端となるのは15年ほど前に出会った、保健所につれていかれる前の子犬との出会いです。
そのときはただ「かわいい。私で繋げられる命なら」
そんな軽い気持ちでしかありませんでしたが、今では家族に迎えた保護犬3匹と、里親さんを募集している預かりっ子3匹と一緒に生活する大所帯となっています。

私がお手伝いさせていただいている保護犬活動は、保護犬の一時預かり。
過酷な環境や、殺処分対象となる保健所などからレスキューした犬を預かり、一生の安心できる家族が見付かるまでの中継ぎをしています。

私がご縁を繋ぐお手伝いが出来た保護犬は10匹を越え、預かり歴としてはまだまだ素人ですが、かわいいだけでは語れない、泣きたくなるような側面を耳にすることや、話にしか聞いたことがなかったような現実を、実際に目の当たりにすることが増えてきました。

12年前に代表がたったひとりで始めた保護犬活動

過酷な環境にいる保護犬を助けたい、そんな一心で保護活動に全力で取り組んでいる大阪のNPO法人 はぴねすDOGさん。
里親さんを募集している犬の数は過去最高を更新し続け、2022年7月15日現在では41匹に。
昨年2021年にはぴねすDOGを卒業した犬数は37匹。
すでに昨年を上回るペースでレスキューが続いています。

一刻も早く最悪の環境から連れ出してあげたい。
生まれたての目も開いていない授乳期の子から、残りの犬生そんなに長くないであろうシニア犬まで。
発育不良など1kgあるかないかの小さい子から、60kgにもなる超大型犬まで。
犬種も大きさも関係ない。
代表 間柴泰子さんの犬への想いと覚悟が伝わってきます。

保護犬活動を始めるきっかけ


元々アパレル関係で働いていた間柴さんは、ある動物虐待のニュースを目にします。
そのニュースにショックを受け、「自分になにか出来ることはないか」と保健所に何度も足を運び、車の免許を取得し、ドッグトレーナーの勉強をし、全く動物とは関係ない世界で過ごしていた間柴さんの生活が一変します。
最初はまともに話を聞いてくれなかった保健所の職員さんも、間柴さんの本気さに気付き、少しずつ保護犬を引き出せるようになっていったといいます。

そんな間柴さんの想いを知り、側で支えてくれていた知り合いのご夫婦と名付けた「はぴねすDOG」
2010年にひとりで始めた活動が12年経った今では、常時20名もの預かりボランティアと、200名ものはぴねすDOGの活動に賛同くださっている方が集まるグループLINEができるほど大きくなっています。

はぴねすDOGの保護犬にシェルターはありません

大好きなお日様のにおいのする洗濯物に包まるクルトン

はぴねすDOGで保護した子たちは、今後一生の家族と一緒に生活する環境と同じような、各預かりボランティア家庭の中で生活していきます。
人の会話やテレビの音、夜になったら寝る時間、その分お昼は一緒にお散歩に行ったり、夕方になるとキッチンからのご飯の匂いに包まれたり。
お散歩では、車通りが多い道を通ったり、人とすれ違ったり、同じく散歩中の子と出会ったり。
ひとつひとつ、その子に合ったペースで無理させない環境を預かりの間に知っていくことで、お迎えしたいと思ってくださるご家族にその子の特性をお伝えすることができます。
犬にも人間にも負担を最小限にして、一緒に過ごしていきやすくなりますね。

保護犬の現状

唯一の難点が最大の難点。噛むこと以外は問題ないイト

“保護犬”とひとことで言っても、背景は様々です。
保健所に収容された子は殺処分になる前に、誰でも引き出せるというわけではなく、許可を得た保護団体が引き出すことができます。
殺処分の対象になる犬数は、はぴねすDOGのような保護団体の活動の成果もあり年々減少しています。

今の18歳の子たちが生まれたころ、平成16年度(2004年度)の犬の殺処分数は15万匹を越えていましたが、令和2年度には4,000匹まで減ってきています。(参考:環境省HP)
減ってきているとはいえ、4,000匹という数字をどう見るか。
決して少ない数字ではありません。
“4,000人の方が殺害されました。“ 大事件ですよね。

野犬、野良犬の存在

河川敷で保護された野良出身のバーム 改め 北斗

保健所に収容される子たちの中には、この日本でまだ野良の子もいるのです。
野犬ちゃんの特徴は「人慣れしていない」こと。
人間が怖くて逃げたり、脱糞したり、噛んだりすることももちろんあります。
まともに接したことのない、得体の知れない“人間”が近づいてきて、知らないところに連れて行かれて、怖くないはずありませんよね。
我が家にも2匹の野犬卒業っ子がいますが、そのうち1匹は我が家に来て2年になりますが、いまだに家族の中でも人を選びます。

山口県では、野良の子たちが集まる場所があると最近ニュースで話題になりました。
野良の子たちは、狂犬病のワクチンを打っていない可能性が高く、わたしたち人間が狂犬病の犬に噛まれ発病すると、致死率は100%といわれています。

”地域猫”と呼ばれる猫はいますが”地域犬”はいません。
犬と人が共存するためには、私たち人間が犬に対して愛情をもって、ある一定の管理をしていくことが不可欠なのではないでしょうか。

 

血統という名の烙印

生まれてから処分の対象とジャッジされるのは“血統”から外れた子です。
血統を生むときに、一定の確率で生まれてくる「マール」と呼ばれる遺伝子疾患を持った奇形の子は、血統書が発行されません。(参考:一般社団法人ジャパンケネルクラブ)

正規の血統を持てない子たちは、「レアカラー」として安価でペットショップ販売されることもありますが、殺処分されることもあります。

遺伝子疾患があっても、命に変わりはありません。
我が家に迎えたグレートデンは、目が見えにくくても、耳が聞こえにくくても、その子の全力で愛情表現して精一杯生きています。
一緒に過ごす私たちの側で、純粋に寄り添ってくれています。

”血統”という私たち人間が勝手に決めた分類のために、マールが生まれるとわかっているのにも関わらず、命を掛け合わせる。
確かに”血統”は生まれるかも知れません。
しかし一方では”遺伝子疾患を持つ処分対象の子を生ませている”ということではないでしょうか。

より犬にとってのより良い改良ではない掛け合わせの歴史が続いていることが、とても残念に思えてきます。

 

多頭飼育崩壊からのレスキュー

多頭飼育崩壊とは、その名の通りいつの間にか「多頭」になってしまって通常に「飼育」することができなくなる「崩壊」が起きること
はじめは1匹。かわいいからもう1匹。
去勢避妊手術なんてするのはかわいそう。そんな思いからか手術をしなかったばっかりに、飼っていた犬が妊娠出産。
犬は一度に平均5~10匹ほどの子犬を出産します。しかも年に2度発情期があるのです。
つまり、1匹のメス犬から、1年間で10~20匹の子が生まれることになります。
あっという間に通常で飼育できる頭数を超え、避妊去勢手術をしようと思ったときには、もう追いつかないぐらいの頭数になっているのです。

昨今メディアでも取り上げられ、注目されているのは奄美大島の多頭飼育崩壊
60匹にもなる子たちがサトウキビ畑で飼育されていましたが、お世話が行き届いておらず、いたるところで出産しており、子犬のレスキューもかなりの頭数になっています。

先日はぴねすDOGにも奄美大島の現場から4匹の赤ちゃん犬がやってきました。
人と一緒に生活をすることに慣れながら、一生の里親様を探す準備を進めています。

 

ペット業界の大変革

昨今、動物愛護法がすこしずつ改正され、繁殖環境にもメスが入っているのです。
ペットショップに並ぶ子たちの里でもある、繁殖場。
ペットショップに関連しているため、身近に感じる方も多いのではないでしょうか。

繁殖場でも、犬たちのお世話がきちんとできるよう、スタッフ人数に見合った犬数にすることや、犬たちが過ごすゲージのサイズといった、基本的な環境が少しですがやっと2021年6月に法で整備されました。
劣悪な環境だった繁殖場では、スペースや従業員数が不足することで維持できなくなり、ブリーダー崩壊・繁殖場閉鎖が一気に増えています。

どれだけ犬の命がぞんざいに扱われていたか、このブリーダー崩壊の件数を知るとゾッとしてしまいます。

ブリーダー崩壊からレスキューされた子は、必要な医療が受けられていないことが多く、失明していたり皮膚がボロボロだったり、てんかんやクッシング症など様々な持病を持っていることも少なくありません。

今まで劣悪な環境の繁殖場では、散歩どころか太陽の光ですら浴びることなく、檻のようなゲージの中で閉じ込められ、ヒート(人間の排卵)の時期になると、犬たちの意思とはまったく関係なく、人の手で強制的に交尾させられることがあるのも現状です。
1回に数匹、命がけで出産してヘロヘロになりながら授乳してお世話をする。
1ヶ月ほどで自分が生んだ子とは離れ離れにされ、またゲージの中に戻される。

 

遊ぶことを知らない子はおもちゃには見向きもせず、ご飯も器に入って置かれていないと食べないこともあります。

命を繋ぐための食事ですら、興味がない子たち。
生きることを放棄しているかのような、生気のない目で預かり宅に来た子たちは、1ヶ月もすると表情が変わり、行動も変わり、とてもいい笑顔を見せてくれるようになります。
目に力を見たときは、嬉しさと安心で泣いてしまうこともあります。

これからの第2の犬生、その子その子にあった生活ができる環境を作ってくださる方と出会えるまで、一切妥協せずにご縁繋ぎをしています。

 

里親探しを続けるということ

乳腺腫瘍を摘出したチョッサラン(左・ポメラニアン)と、大食道症のはなはなまろん(右・ミニチュアダックスフンド)

はぴねすDOGには、今まで一緒に過ごした預かりっ子が幸せになるときに泣いちゃう預かりさんが多いのです。
もちろん嬉し涙なのですが、頑張って乗り越えて幸せをつかんだからこそ、その嬉しさはひとしおです。

しかしどの保護犬においても、ことの発端は“人間のエゴ”の影響が大きいのではないでしょうか。
元々は「使役犬」として役割があり、人間と一緒に二人三脚をしていた犬たちも、いつの頃からか”かわいい”ために新しい犬種が掛け合わされる。
そして”かわいい”ための子たちは、”かわいい”子から売れていき残った子は処分されていく

なんとも残酷な循環ですね。

 

ただ、あなたの側にいる子がペットショップから迎えた子だとしても、恥ずかしがらないでください。
その子の命は大切な命です。かけがえのない家族です。

もし「新しく迎えたい。」
そう思ったときは、もしかしたらその子の親かも知れない、兄妹かも知れない、同郷の子かも知れない、過酷な環境でいままで頑張ってくれた子を引き取る選択肢も考えてもらえたら嬉しいと思っています。

 

この保護活動が無くなることが、いちばん理想だと話す間柴さん。
保護犬たちの現状を少しでも知ってもらうために、そしてひとつでも多くの命を繋ぐために、毎週のように譲渡会イベント「はぴねすフェスティバル」も企画運営しています。

はぴねすDOGでできる支援の形は様々。
保護犬の一時預かり、商品の購入(イベント、オンラインサイト)、ご寄付など、多様な形をご選択いただけます。
ご支援いただいた方の想いもしっかり受け取りながら、1匹でも多くの命をつなげるために、全力で進んでいきます。

<2022年7月23日現在の情報となります。 詳細は必ず以下の公式ページをご確認ください>