”私なんて”の、その先の自分へ
「スキルはあるはずなのに、自分ひとりでやっていこうと思うと、なかなか自信が持てない」——そんな声に、心当たりのある人は少なくないはずだ。今回のインタビューに応じてくれたのは、パッケージデザインの世界で長く活躍してきたデザイナー。会社という看板を一度離れ、ひとりの「自分」として歩み始めた彼女が、少しずつ自分を肯定し、変化そのものを楽しめるようになるまでの道のりを聞いた。
肩書きがなくなったとき、芽生えた不安
もともと「コンプレックスの塊みたいなところがあった」と彼女は振り返る。デザインのスキルに関しては、学生時代に学んだことがなかなか役に立たず、入社後も自信が持てない日々が続いた。それでも勤めていたデザイン事務所で、大手のクライアントを相手に十三年。チームでアイデアを出し合い、ブラッシュアップを重ねて形にしていく仕事を積み重ねてきた。
けれど会社を離れた途端、「肩書きがなくなって、一人の個人になったら何ができるんだろう」と、急に自信がなくなったという。サラリーマンとして働いてきたぶん、自分のデザインにどれだけの価値があるのか、見当もつかなかった。


「我慢強さ」を手放して
転機になったのは、四年前の離婚だった。子どもたちを癒すには、まず自分が満たされていなければ——そう気づいてから、彼女は自分自身を見つめ直していく。最初の会社に入るとき「苦労を苦労と思わず努力する強さがあります」と書いたほど、我慢強さが「ウリ」だった。けれどそれを積み重ねるうちに、しんどさも溜まっていたのだと言う。
「白く見せて、黒い自分がいるなあ」。我慢する自分の裏側にある気持ちに気づいたとき、彼女は問い直した。自分はどう生きたいのか、どうするのが幸せなのか。考え方の癖はすぐには変わらず、繰り返しながらも、少しずつ自分を主役にした生き方へと歩を進めていった。
変わるプロセスそのものを楽しむ
かつては「途中段階の、まだできていない自分」をずっと責めて苦しかった。けれど今は違う。「こんな風になりたいな」と思ったら、まだそこに届いていなくても、なりたい自分になったつもりで日々を過ごす。「結局その積み重ねなんだなっていうのは、やってきて、なんとなく実感としてわかってきた」。変化はある日パッと切り替わるものではなく、徐々に徐々に進んでいく。だからこそ、彼女はそのプロセスを楽しみたいと話す。

自分を表現し、価値を伝えていく
デザイナーとして大切にしているのは、しっかりとヒアリングをすること、そして「半歩先を行くデザイン」。ありきたりではないけれど行き過ぎない、「ちょっとおしゃれね」「ちょっと変わってるね」くらいが、多くの人に選ばれるちょうどいい塩梅なのだという。ひとりで仕事を受けるようになり、営業や値付けという未知の課題にも向き合うことになった。紙に出力したもの以外の、考えてきたプロセスにこそ価値がある——会社員時代に教わったその言葉を、今あらためて自分の課題として噛みしめている。
最近は「自分を表現したい」という気持ちも芽生えてきた。同じデザインでも、楽しそうに作っている人から選びたいと思うように、自分も真摯な姿勢で、好きなものを発信していきたい。ひとりでコツコツ向き合う時間も、誰かと一緒に作り上げる時間も、どちらも大切にしながら。培ってきた土台の上で、彼女はこれから何をしたら楽しいかを、ゆっくり探し続けている。





